パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~

「うちの事務所ね、かなりの借金があるらしいの。前に撮った映画が失敗したらしくて。10億とか。フフ。想像出来ない金額よね。どうしようもないとこまで来たみたいで。そしたらね、青山さんの事務所から話を持ちかけられて。・・・ごめんね。奈桜が聞いても面白くない話ね」



「なるほどね。それで借金のカタに梓か」



「勘違いしないでね。あのスキャンダルはウソよ。私と青山さんの間には何もない。仕事以外で会った事もない。ただ、向こうの事務所は借金を肩代わりする代わりに私を映画で使いたいって。これから青山さんが出るドラマにも私を相手役で使うって。・・・基本的に私のスケジュールは向こうの事務所が管理するんですって」



肝心な所は言えなかった。
映画での濃厚な濡れ場やセミヌードがあるなんて、とても言えない。
女優としての仕事に誇りは持っているが、この話には梓としては納得行かない部分があった。
話の流れで必要な濡れ場は仕方ない。が、明らかにそれを売りにしての脚本作りには同意しづらい。
でも、断れば事務所が潰れる。
今までお世話になった人たちの事を考えると、『自分さえ我慢すれば・・・』という思いが心を持ち上げる。



『違う!向こうの狙いは梓本人だろ!!』
そう言いたいのを、奈桜はグッとこらえた。