「何？どうしたの？奈桜、具合悪いの？」



少しのわざとらしさが見えたが、心が奈桜に駆け寄り心配そうに顔を覗く。



「腹が痛くて吐き気もある」


碧が代わりに答える。
ひとつ症状が増えた事に奈桜は咳き込む。



「胃腸風邪かもな。病院に行った方がいい。オレがタクシー、拾ってやるよ」



そう言って奈桜を立たせる。
心が真面目な顔でそう言うと、ウソも本当に聞こえる。
さすが霊感のある人の言葉は、こういう時に説得力がある。



「あっ、でも・・・今から・・・」



チラッと石田を見て反応を伺う。
石田の事だ。ダメだと言うはずはないだろう。
分かっていて碧も試す。



「分かりました。こっちはなんとかします。とりあえず病院へ」



「今日、ロケだよね？オレ、代わりにやろうか？」



心の言葉に奈桜の目がひと回り大きく見開く。