~好きなら~
「奈桜さん、今日のロケは碧さんとお二人です。おそらく碧さんがしきって進めて下さると思います」
もうすぐ目的地に着く、という頃にマネージャーの石田が奈桜に声をかけた。
奈桜はその声でもまだ眠っている。
「その後、絵本の打ち合わせ、撮影、取材・・・今夜も遅くなりそうです」
だんだんと小声になりながら、聞こえていないだろう奈桜に言った。
「忙しすぎてすみません・・・」
「えっ、何?」
目をこすりながら、奈桜がようやく反応する。
何となく声は聞こえたようだが、まだ思考は夢の中・・・
「あっ、もう着きます。起きて下さい」
バックミラーに映るねぼけた奈桜のあどけない表情に、石田は一瞬ドキッとする。
「カッコ良くて、可愛いって・・・奈桜さん、反則ですよ・・・」
絶対に聞こえない小さな声で石田が呟いた。

