パパはアイドル♪vol.2 ~奈桜クンの多忙なオシゴト~

奈桜は桜の部屋をゆっくりと開ける。
香りのするものは何も置いていないのに、ほのかに香るのは何故だろう。
お風呂上りの匂いだろうか?



奈桜の目は真っ直ぐに桜を見た。
その瞬間、疲れの滲んでいた顔は笑顔へと色を変える。
ベッドの側にしゃがみ、その愛おしいものを見つめる。
子供の寝顔はどうしてこうもカワイイのだろうか。
スベスベのほっぺも、クルンとした長いまつげも、目が開いていなくても十分にカワイイ。
ギュウッと抱きしめて、顔中にキスをしたい衝動をグッと抑え、そのホワホワなほっぺに自分の頬を合わせる。
柔らかい感触に全身が包み込まれて行く。
『幸せ』が形になる。



「桜・・・」



1番に考えたい事は娘の桜。
幸せでいて欲しいし、絶対に傷付けたくない。
特に自分のせいで苦しめたくない。
人より『特別』であって欲しくないし、今の友達と出来るだけ『同じ』でいさせてやりたい。
『普通』に遊べて、『普通』に道を歩いて・・・



でも、その『普通』は、周りの人の犠牲の上にあるのかもしれない。
どこまでそれに甘えられるのか。




「今はこのまま進むか?」



桜の柔らかい髪をそっと撫で、優しく軽く抱きしめる。
悩んでも長引きそうな事は、楽観的に考えるのが奈桜のいい所かもしれない。