「分かった。言うとおりにする」



「では、よろしくお願いします」



状況がまだよく分からない。
当事者だというのに。



「奈桜!大変よ。外、すっごい人よ。マスコミ?ハンパないから。あれは奈桜が目当てなんでしょ?何かやらかしたの?」



桜の様子を見に来た奈桜の母親の優子が興奮した声で言う。
きっとかなりの数なのだろう。



「あ・・・あぁ。オレが目当てなの・・・かな?って、まさか芸能人じゃあるまいし。一般人のオレに何の用があるんだよ。ここ、誰か芸能人でも住んでるのか?」



『あぁ!』と、優子は大きな声を出した。
奈桜が芸能人である事は、桜にはまだ言ってない『トップシークレット』。
あまりのマスコミの数に興奮した優子がつい口をすべらしたのだ。
奈桜がフォローするまで全く気付かず・・・。



ソファーで忘れ物がないか確認していた桜は集中していたのか、2人の会話に気付いていないようだった。