深夜遅くまでかかった撮影もようやく終わり、奈桜は石田の車に乗り込む。
雑誌の取材だけでもいくつ受けたか分からない。
合間を縫って、こなせるだけこなした。
シートに座るなり瞼が強制的に閉じて来る。
「奈桜さん、」
バックミラー越しに石田が奈桜を見る。
返事がない。
「奈桜さん、」
「ん?」と奈桜が重い瞼をこじ開ける。
「お疲れのところ、すみません。ちょっとお話があるんですが」
車はゆっくり走る。
「何?」
「仕事の話です」
「分かってるよ。デートの誘いだったら他のヤツにするだろ?」
石田の顔が赤くなった事に奈桜はもちろん気付いていない。

