「、うわー、」
キツいな、という同情の表情を浮かべる泉月さんを恨みがましく仰ぎ見る。
と、思い出したような顔。
「あ、そうだそうだ。
お前に話あるんだけど、いい?」
青いシャツを捲った腕にはめた腕時計をコツコツ、人差し指で2度叩いて首を傾げる。
時間ある?と言ったところだろうか。
(…時間、ない)
『あー…、と、講義、あるんで』
「あ、山中のだろ?あの人の話つまんないよ」
『……(んな事言われても)』
「ほら、おいで」
すいませーん、此処に誘拐企んでいる人(年齢不祥)がいまーす。
心の中で間延びした声でそう呟くと、ウンザリと半眼になったそれ彼に向けた。
それでもニヤリと笑い続ける泉月さんは、早く、と私の腕を遠慮なく引く。
(…もー。なに、この強引な人)
それでも端正な顔つきで厭じゃない笑みを見せるものだから、なんだか憎めない。
ため息を吐き出して、どこか諦観したように彼が引くままに歩きだそうと―――――
――――した、けれど
(…う、ゥお?!)
右腕を引かれたままに歩きだしたはずの体は何故か反対方向に強く引っ張られる。
(…な、)
強く仰け反った自身の体に驚いて初めて、背後から左腕を何者かに引かれているのがわかった。
それはもう、前にいる泉月さんに掴まれている右腕の何十倍も強い力で。


