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午後1時。ゆっくりと起床して大学へ向かった私は、講義室へ向かう階段をあがろうと、右足を一歩伸ばした。
すると、
トントン。右肩を二回叩かれて、その足はそのまま静止。
どこぞの誰だと振り返るが、真っ青なワイシャツしか視界に入らず、目線を上へとあげた。
「よ、久しぶり」
地上から180センチは軽く超えた位置で、その正体はそう言ってニカッと笑った。
『………。誰、でしたっけ』
「………」
『嘘です、覚えてます』
「3日しか経ってないんだから覚えとけよ、」
冗談を言った瞬間の、泉月さんの無表情に無言の圧力を感じて、恐くなった私。
きちんと言葉を返せば、随分偉そうにそんなことを言われた。
―――カツ、カツ、
「え、行くの?」
小さく会釈をしてそのまま階段を上り始めれば、半笑いで泉月さんが追いかけてきた。
授業あるんで、と一言残すとそれに構わず歩き続ける。
「あれから葉どう?」
『…。あの後から口きいてません』
そう。あれから3日経ったけれど、新戸くんとは言葉を交わしていない。
というより、私の方が明らかに避けられている。
すれ違っても一瞬かち合った瞳は容赦なく逸らされ、彼は私の横を足早に通り過ぎていくだけ。


