「……」
『……』
ほら、どうしてくれるこの空気。
嵐が来て去った後のように静まり返った私と新戸くんの、空間。
(…なかったことにして、話題、変え、――――)
そう思ってチラリと横を見れば、予想外に新戸くんはブレることなくしっかりとこちらを向いていた。
―――その大きな瞳で、
『…あ、と、』
言い逃れできなくなった私は引き笑いに顔を強ばらせ、乾いた声をだす。
照れ臭そうに笑うかと思いきや、真っ直ぐな瞳は揺らがない―――。
(…え、誰)
そう思ってしまう程、普段の可愛い新戸くんとはかけ離れていて…
(…え、)
どうしたものかと困惑していれば、プツリと何かが切れたように彼のその表情は緩む。
「…、」
いつものように優しいそれに変わった笑顔は、眉尻がさがり、悲しそうで、困っているようで、
私から目を逸らして、笑った。
「…。じゃ、」
一言。この騒がしい空間にやけに冷たく響いた。
躊躇いなく食べかけのトレーを持って立ち上がると、足早に私の後ろを通り過ぎる。
一度も、私の顔はみないで。
『…あっ、』
何かを言おうと手を伸ばしかけたけれど、彼が去る時に感じた微かな風が冷たくて、指先を硬直させたままその背中を見送った。
(………、)
残された私が感じたのは、
罪悪感と面倒臭さと後悔。
つくづく、酷い女。


