思えば、夜くんとの会話は何時もこんな感じだ。
売り言葉に買い言葉、熱くなって空回りをするのはいつだって私のほう。冷静さを保つという面では、彼を見習うことも一考なのかもしれない。
『何で私のこと色々知ってるの?
恋愛知りたいのだって、何で私なの?』
「―…何で、何で、煩いよ」
(…あ)
やっと、こちらを向いた。
いつに増して不機嫌な顔をして夜くんがこちらを振り返った。
(…なんだ、表情筋あるんじゃん)
煩い、と言われたのは心外だし、夜くんみたいに全てが謎で包まれた存在に対して疑問ばかり湧くのは当然だと主張したい。
…けれど
彼が私を見てくれたことがその時は何故か、凄く嬉しかった―――。
たとえ、初めて垣間見た表情が不愉快そうなそれだったとしても。
『顔、恐いよ?』
「フウに言われたくない」
『私の顔こわくないよ?』
「…いつも浮かない顔してるでしょ」
面倒臭そうにそう言って、人差し指で自身の眉間にわざとらしく皺を寄せてみせる夜くん。
人工的に造られたそれは、酷く歪で不自然だった。
「こんな感じ」
どうやら、それは私の真似らしい。
『そん、な顔してない』
「してるよ」
『…してな…っ、ハァ、』
疲れる。至極疲れる。でも心なしか少し、こういうやり取りが楽しいって思った馬鹿な自分を隠したくて。
もっともそんな事を思ったのはきっと私だけ。
無表情に戻ってコテン、と不思議そうに小首を傾げる目の前の無機質なロボットは、少々面倒臭いな、くらいにしか思っていないはず。
――その日は私も、普段より表情筋を使った気がした。


