forget-me-not








『ココ、住んでるって、まさか隣…?』

「うん」


即答ですか、と突っ込みたい気持ちを代わりに指先に込めて布地を握った。

隣に住んでいると聞いて動揺しているのは何でなのだろう。それからどうして体の内側が熱いままなのだろう。



(…キスなんかするからだ、ばか)



『今まで会わなかったもん』

「最近引っ越したんだよ」

『…わざと臭』


そう言えば夜くんは肩を竦めて黙ってしまう。こういう時、何か言い返してくれないと困るんだけどな。

白いYシャツの背中をぼーっと見つめたまま、黒いロングコートの下はいつも白かったんだと気付く。



(…ねぇ、なにやってるの?)



そう言いたかったのに何故か声にはならなくて。私のほうを少しも振り向かない夜くんが何だかもどかしかった。




「態とじゃないよ。…フウは自惚れるのが得意だね」


黙っていた癖に、今更そんな皮肉を返される。声色は普通だったけれど、こちらを見ないままに言われるとからかっているのか解らなくなる。




『別に、私の隣だから引っ越したなんて言ってないじゃん』

「僕も、そんなこと言っていない」



(………………)



私が、引けばいいんですか。