「…嫌だ」
心なしか顔を染めて俯く私に唐突に放たれたそれ。
嫌だ、?この期に及んでこの人は何の文句があるんだろうか。
訝しむように眉を顰めゆっくりと彼を伺うように顔をあげる。
「僕がするんじゃなくてキミがするところを見せて?」
『…何、を?』
「フウが、恋するところ」
ひたすら見つめられ、何も言えない。
その前に意味が解らない。
『人間の恋愛は見飽きたんじゃないの?』
「…そうだね。どうかな?」
(…意味解んないし強情だなぁ)
引かない態度にほとほと困り果てて苦笑を浮かべていると、
夜くんは徐にワインボトルを手にして、空になった私のグラスにゆっくりと注いだ。
「…ねぇ、知ってる?」
『、』
「――この世には死ねる生き物と死ねない生き物がいるんだ」
最後の一滴がポトリ、グラスに落ちた。
何故なのかはわからないけれど、それはまるで滴る血のように見えた。
(…………)
『…ふぅ、ん』
夜くんの言った意味も、意図も不明瞭だ。とりあえず相槌を打つことしかできない。
だって肝心の本人は出会った時から一つも表情を変えないのだから、察しようがないのだ。