『あ、起きたの?』
一度息を吸い込んで平常心を保ってから仮面を被って後ろを振り向く。
でもそこにあったのは怖いくらいに透明で無表情な瞳だった。
せっかく被った私の仮面も易々見透かされそうで、思わず視線を逸らす。
「うん」
私をしばらく凝視した後、ゆらり、その冷めた瞳を横にずらして一言頷く。
徐に私の横のカウンター席に座る黒川 夜。
『どうしたの?急に倒れるから驚いちゃった。病気なの?あなた、』
「……」
何も言わない。そのまま退廃的な眼差しでワインボトルを見つめている。
(…寝ぼけてんのかな)
「キミはどうしたの」
今度は真っ直ぐ私の目をみて問われる。
それに耐えることなんて勿論出来ないから、私はまた視線から逃れるようにグラスを手にした。
『飲む…?』
ボトルを傾けて訊くと、彼は首を振った。収拾がつかないので仕方なく自分の分を注ぐ。
「またあの人のこと、考えてたの?」
グラスを口につけた瞬間、そう訊かれた。
馬鹿みたいに動揺を隠せなかった私はそのまま手を止めて目を見開く。


