(…えー)
コチ、コチ、コチ
時計の針は規則的に動き続け、この部屋を夜更けへと誘う。
奥のベッドルームで眠る侵入者の気配は姿は見えなくとも、キッチンのカウンターまで伝わってきた。
(…どうしよう)
カウンターに座って珈琲を一口飲んだ。
こうなったら残念ながら泡風呂もワインもお預けだ。睡眠も…ベッドを占領されてしまっては元も子もない。
(…この部屋には男の子、誰もあげたことないのに)
プライド――そんなものなのかもしれない。
神谷のことがあってから誰であろうとこの部屋の玄関を跨ぐことを許してはいなかった。
私は行くけれど、来させない。そうすればこちらがのめり込まない限り深入りは避けられる。
思えば都合の良い話、だった。
『フー、…あ』
息を吐きかけてハッ、とした。
溜め息をつく癖。
神谷に注意されたことがあったっけ。
(…「自分の名前と被るから、やめなよ」)
そう言って苦笑されたっけ。


