forget-me-not








三軒茶屋の駅を降りて徒歩5分。

外観を白で統一されたモダンな我が城は破格の家賃8万だ。

お化けがでるらしい、なんて噂が近隣であるのが原因らしいけれど、私は寧ろ本当ならお目にかかりたいと思っている。



(…えっと、鍵、鍵、)



ここ数日の疲労を癒やしたい。

ゆっくり泡風呂にでも浸かりながら少し昼間のワインを楽しんで、その後はゆっくりベッドで眠りにつこう。

そんな事を目論んで、帰りがけに買ったワインの袋を揺らした。




『…あ。あったあった』


カチャリ。

鍵を回してドアを開ける。

部屋に入ろうと足を手前に出し、ふと左側を視野に入れた。



(……………)




『…エ?』


サーッと、顔と背中が青ざめていくのを実感した。

昼間っからワイン片手にノーメイクで、スキニーにグレーのセーターという手抜きなお見舞いスタイル。

寝不足だから勿論顔色も悪いだろう…。



(…そんな事じゃなくて!)




『…何で?あんたがここに居るの、』


そう言えば彼は少しも反応を見せず、両手をポケットに入れたまま気怠げに私を直視していた。