「…ともだち?」

『そう、友達』


そのまま睫毛をバシ、バシ、と音が鳴りそうなくらいに瞬くと、黒川夜は首を傾げた。




「勉強になったよ」


そして静かにそう言って、窓の外に目を遣った。

口許こそ動かさなくとも、その表情は酷く、穏やかで。




「いい天気だね」

『え、雷鳴ってるし、なに言って…』


彼の穏やかな横顔から驚いて視線を窓の外に向ければ、本当に。



(…晴れて、る)



白い雲は透き通る絹のように、青い空は黒川夜の蒼とは別の、爽やかな水色。

太陽はその向こうで煌めいて、この部屋へも一筋の光が後光の如く差し込む。

黒川夜の横顔を掠めたそれ。

蒼色の深い瞳は麗しく輝き、光を受ける。その美麗な横顔と白磁の肌に、不覚にも魅了される。



(…綺麗)



先程とは打って変わった空。

まるでそこから光に乗って現れた神様のように尊く、硝子のように美しい。



(…なんでコイツはこんなに綺麗なんだろう)



虹がかかって、気付けば自然に涙が零れ落ちていた。




『…や、やだ』


慌てて目許を拭った。

絶対的な魅力に圧倒され、自分でも解らない感情に支配されて…。



(…なんで泣いたんだろう)