『本当に、本当に人の命が救えるんだとしたら…。勿論私はリカを救いたい』
少し冷静になって一息つくと、黒川夜と目を合わせずにそう呟いた。
「自分を犠牲にしてまで?」
『記憶なんて元々消せるもんじゃないんだし、リカが生きてたほうがいいに決まってる』
黒川夜は納得いかないとでも言うように組んでいた両手を離して肩肘をつき、机を爪で弾いた。
そして一言、その長い睫毛を伏せながら「ふーん」。
『…なによ』
「どうして自分を救わないで他人を救うの?」
肩肘をついたまま視線だけをこちらにあげ、その蒼い瞳が問う。
人の心の奥を見透かすような、その瞳で…。
「“偽善”とかいうもの?」
『…っ、違う、私は、』
「じゃあどうして自分よりリカ、なの」
『それは…』
単純にリカを死なせたくないから。
ただそれだけだ、なのに…。
偽善…?違う、絶対にそんなものなんかじゃない。リカは、彼女は私にとって大切な…
『私が今ここに居られるのは、彼女のおかげなの。だから生きていて欲しいの』
「、」
『――たった1人の、友達だから』
今度は目を逸らさずに、その深い蒼をまっすぐ見つめて言うことができた。
黒川夜は一瞬その瞳を見開いて、ただ、ジ、と私を見つめ返す。


