「…雨嶺、先輩、」
『やめ、て』
パッ、と新戸くんの手を払って顔を背ける。
そして拳を握りしめて歯を食いしばり、しっかりと自分の足で地面に立った。
「どうして…」
私の背中に掠れたいつもの可愛い声が降りかかる。
「どうしてそうやって…、いつも先輩は、人を拒絶するんですか…」
『、』
「リカさんしか居ないなんてことない。俺が居ますよ…」
カツリ、私へ一歩近づいた新戸くんの両腕が私の体に回る。
『や、やめてよ。…やめて、』
「…いや、です」
嫌がれば嫌がる程にギュ、と強く後ろから抱き締められる。
その抗えない力強さといつも見ていた新戸くんのイメージとが重ならない。
(…やだ、やだ、こんなの)
『…っ、やめて、新戸くん』
「泣いて、いいよ、先輩」
(…なん、で)
私を抱き締める彼の温もりと甘い香水(なのかな?)が鼻腔をくすぐって、油断しそうになる。
(…だめ、なのに。…私はあの時誓ったの。忘れてなんか、ない)
(…この手を振りほどかなくちゃ、)
『…でき、ない』
「…え」
『私はあなたの前で、泣くことはできない』
力強くそう言えば、僅かに緩められた両腕。


