『なんで、簡単に…っ、そんなこと…、言わないで!』
私に叩かれた黒川夜の左頬は、元が真っ白だっただけに淡いピンク色が目立った。
人間らしいそれに、あ、こいつもちゃんと痛みを感じたりするのかな、なんて馬鹿なことを思う。
『…ご、めん』
何で、私が謝らなきゃいけないんだろう。
叩かれた本人は全く動じずに私を見つめたままだったが、やりすぎたかと反省しての謝罪。
けれどやはり黒川夜はその表情を変えなかった。
「簡単、だよ」
『…なに、が、』
「人が死ぬのなんて」
飄々と瞳を見開いてそう言う彼は、厭でも耐え難い現実を私に押し付けた。
(…っ、な、に、)
言い返せない自分が悔しい。
だいたいこんな奴と言い争ったって仕方ないのに。
(…リカが良くなるわけじゃ、ない)
『フっ、正論、だね』
「そうだよ?」
皮肉のつもりで鼻で笑えば、真顔で受け止められた。
その乱れない感情も表情も、頭から足の爪先に至るまで欠点ひとつない美麗さも、今は余計に癪に障る。


