『まさか…。ねぇ、おばさん!』
「もって、あと3ヶ月だってさっき言われたわ」
『…っ!』
(…そん、な)
――ダンっ!
私は病室を飛び出して走った。
(…そんな、あんなに元気で。3ヶ月って、3ヶ月、って)
リカにリンパ癌の持病があったのは前々から知っていた。それが完治しないという事実も。
それでも彼女は、平気平気、なんて余裕をかまして屈強に毎日を過ごしていたのに。
『…っ、く、リカ、』
病院の中庭のベンチまでたどり着いて、弱い私は泣いた。
「――なに、してるの」
泣き顔を見られたと、ハッ、として顔をあげれば、
相変わらず無表情の黒川夜が不思議そうに首を傾げて私を見下ろしていた。
『…っ、別に、』
「どうしたの」
『なによ、あんた。っ、グス、からかってんの?…みてたなら、わかるでしょ』
鼻を啜りながら往生際悪くも極力泣き顔を隠してそう答えれば、
黒川夜は少し黙ってジ、と私をその冷たく青い瞳で見据えている。
「“リカ”が、死ぬこと?」
―――パァン!
立ち上がると、思わず勢いで黒川夜の透き通った白い頬をひっぱたいた。


