「わー、は、はい。じゃなくて、それより大変なんです先輩!!リカさんが倒れて…きゅ、救急車で…」
(…なんだって?!)
『どーゆうこと?!倒れたって…。いまどこ?』
「東慶病院です。突然倒れたらしくて…原因はまだ…」
尻すぼみになる新戸くんの口調に冗談じゃなく本当なんだとわかる。
突然の出来事に取り乱す私を、黒川夜はただ冷めた眼で見下ろしていた。
『と、東慶病院…。わかった、すぐいく!!』
「お、俺もついて行きます!」
『なんで、いいよ、大丈夫だから新戸くん』
走りだしかけた私の腕をパッ、と彼が掴んだ。
何なんだと怪訝に思い振り返れば、
「…先輩が、心配ですから」
眉をさげたまま遠慮がちに情けなく微笑った新戸くん。
大きな瞳はいつになく真剣で、あ、男の子なんだな、と思った。
反面、焦ってざわついていた私の心は彼のその表情と掴まれた手の温もりに少しホッ、とする。
『じ、じゃあ一緒に行こ』
「はい…!」
『――リカ!』
「お静かに願います。眠ってらっしゃるので」
タクシーから走って病院の個室を勢いよく開ければ、早々に看護婦さんの牽制をくらう。
『リ、リカは?!』
「今の所は安定しております」
看護婦さんは俯いてそういうと個室を出て行ってしまった。
「フウちゃん…」
奥に視線をやればベッド脇に母親がリカの手を握って座っていた。
『おばさん、リカは…』
「フウちゃんが思ってる通りよ…。でも、こんなに早いなんて」
『そんな…。まだまだ平気ってリカ言ってたのに…』
点滴に繋がれ、酸素マスクをはめてベッドに横たわっているリカは弱々しく、
いつもの強気な彼女の影は微塵も残っていなかった。


