forget-me-not







「――でもそうすると、恋をしていないことでまた苦しむことになる。by Woody Allen」


ハッとした。そんな言葉、あったっけ。

何かを鋭く突かれたようで、夜くんから顔を背けて遠くの湖を見ていた。




「フウを好きになったばかりの僕にはまだ解らないけど、キミはきっと、恋をしてたほうが綺麗だよ」


それを聞いて体が熱くなるのを感じた。

ひたすら無感情男だった夜くんの口から、そんな言葉がでるとは思いもしなかったから。

綺麗だよ、そんなこと誰よりも美しい夜くんに言われたら身が持たないっていうのに。



『き、綺麗なんかじゃ、ないよ』

「綺麗だよ。僕は世界を壊すための道具だけど、キミはまるで反対に天使みたいだ」


……ヒ、と声が漏れそうになるのを抑えたら鳥肌がたった。

照れ隠しに発した謙遜、そしたら倍返しにされた。

しかも、普通の人間が言ったらいけないようなセリフをさらりと、ガラスのように美しい夜くんだから言える。



(…夜くんが感情をもつと、キザになるのか)



そんな使えない豆知識。だけど、きっと私しか知らない。