夜くんを好きだと実感したことは、私にとってとても尊いことだった。
それがわかったからといって、どうにかなるわけじゃないけど。
彼と出会えたおかげで私は少し成長して、これからまた前を向いて歩いていけるような気がするから――
「――恋愛はポタージュのようなものだ。初めの数口は熱すぎ、最後の数口は冷めすぎている。by Jeanne Moreau」
(……え、)
湖をぼんやり眺めていたら、聞きなれた声が背後から。
(……まさか、そんな、そんなはず)
「キミが好きなのは、この言葉だっけ」
(……そんなこと、あるわけないのに)
とくとくと期待に揺れる鼓動を手で押さえながら、おもわず振り返る。
『……夜くん』
そこには、やっぱり黒ずくめの彼がいた。


