forget-me-not








***



「――どうして、あんな事したの」


私の部屋。

大学を出た途端、夜くんは私を抱きかかえ、ほとんどひとっとびでここまで来た。

さすがに人間とは身体能力が違うらしい。

だけど、普段はあまり力を使おうとはしないところをみると、余程切羽詰っているのかもしれない。



『夜くんには、関係ないでしょ?』

「あるよ」

『何で?……それに、もう戻ってこないって言ったじゃない!』

「そのつもりだった」



その手を振りほどいて、うっとうしげに叫んだ。



『……じゃぁ、じゃぁなんで――!』





そうしたはずなのに。




次の瞬間、私は夜くんの腕の中にいた。











「……キミを、失いたくない」


掠れるようなその声は、本当に夜くんのものなのか。

それさえも疑わしいくらいに、彼らしくない声だった。



(…何で、今更。……勝手だよ)




「フウが死ぬなんて、ぼくが許さないよ」


ぎゅ、と背中に回った腕がさらに強まる。

どくどく、と心臓の鼓動が早くなるのを感じる。





私だけが、熱い。





だって、夜くんの体は、冷たいから。