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「――どうして、あんな事したの」
私の部屋。
大学を出た途端、夜くんは私を抱きかかえ、ほとんどひとっとびでここまで来た。
さすがに人間とは身体能力が違うらしい。
だけど、普段はあまり力を使おうとはしないところをみると、余程切羽詰っているのかもしれない。
『夜くんには、関係ないでしょ?』
「あるよ」
『何で?……それに、もう戻ってこないって言ったじゃない!』
「そのつもりだった」
その手を振りほどいて、うっとうしげに叫んだ。
『……じゃぁ、じゃぁなんで――!』
そうしたはずなのに。
次の瞬間、私は夜くんの腕の中にいた。
「……キミを、失いたくない」
掠れるようなその声は、本当に夜くんのものなのか。
それさえも疑わしいくらいに、彼らしくない声だった。
(…何で、今更。……勝手だよ)
「フウが死ぬなんて、ぼくが許さないよ」
ぎゅ、と背中に回った腕がさらに強まる。
どくどく、と心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
私だけが、熱い。
だって、夜くんの体は、冷たいから。


