「……は、ぁ?」
冗談だろ、と乾いた半笑いをする泉月さんに、立ち上がった私は近づいていった。
『…冗談なんかじゃ、ありません』
「な、に……は?正気?」
『正気、ですよ』
つかつかと、近づいていく私に反して、泉月さんは椅子に座ったまま無理やり後ずさろうとする。
そこにはあからさまな動揺が見て取れた。
あぁ、なんだ。この人、私を殺したいほど憎んでいるわけでもないんだ。
なにもかも諦観したように虚ろな頭の中で、そんなことを思った。
それなら、まだ間に合う。
私がまた不幸を呼び寄せる前に、私自身がいなくなれば。
(…それが一番、いいじゃないか)
「ちょ、落ち着けって」
『何でですか?私が死ねば、新戸くんは絶対安全ですよ?』
「……ふ、ざけんなよ」
『……。はやく、』
不思議と恐怖はなかった。ただもうこの過去に縛られた毎日を、早く終わりにしてしまいたかった。
嫌がる泉月さんの両手を取って、自分の首にあてた。その上から力を込める。
『さぁ、早く私を殺してください』


