「あんたのことなら殆ど何でも知ってるよ?……色事避ける、とか言っといて、いっちょまえに二股かよ」
『…っ、そんなこと、してない』
「してるよ。こないだ、今日会った場所で葉と抱き合ってたろ」
私が咄嗟に息を飲むと、泉月さんは片眉をあげて意地悪そうに笑った。
「――見られてないとでも、思った?」
その目が嫉妬で赤く燃えるのがわかった。
私は息苦しさを感じて、だんだん気道が狭まっていく喉元を押さえる。
憎悪が、嫉妬が、愛情が、人を狂わせる。
神谷との最期の会話、病院で見た陵の顔、パラパラと真っ赤に染まった映像が脳裏をちらついて。
(…息が、)
「藤堂リカ、さ。言ってたよ?あんたはいい恰好して言い訳して、結局なにとも向き合ってないんだって。……そんなんだから、見放されんだよ」
(…息、が、)
「なに、苦しいの?…でも、同情しないよ。あんな形で神谷を永遠に奪われた苦しみは、何にも変えられねぇよ」
(…あぁ、もう疲れた)


