「ちょっと、来てよ」
何かを決意したように寄りかかっていた体を起こし、煙草の火を消す泉月さん。
私はその声になかなか反応できず、上手く働かない頭を必至で動かしながら、彼の目を見ていた。
「そんな顔するなよ……、ずるいって」
『……』
「そんな被害者面、俺が、わるいみたいだろ?」
くしゃっと口端をゆがめて情けなく笑う。
その手が、表情とは裏腹に強い力で私の腕をつかんだ。
『…痛、』
「いいから、きて」
その声は静かで、私の顔も見ていない。
落ち着いたその態度が何かの前触れのように感じて余計に恐かった。
強引に腕を引かれて歩き出した拍子に、持っていた桃カルピスは地面に落ちる。
その薄桃色の中身が流れ出ているのを振り返りながら、なんで毎回ここであれを零してんだろ、なんて頭の隅で思った。


