「……もう、やだよ、俺。なんかを失うのってさ、」
ドキリ、その言葉が私の胸に響く。なんで、この人が私と同じ気持ちを抱えているんだろうか。
妙な共感を覚えて、恐る恐る泉月さんの顔を見上げると、彼は力なく笑っていた。
「みて?」
ね、これみてよ、って感じの明るいテンションで泉月さんが自分の白衣の袖を捲った。
その下にあるものを見て、私は驚愕を隠せなかった。
そんな反応に満足したのか、彼はニヤリと笑うと“それ”に魅入られるように腕を見つめる。
「…これさぁ、あいつが死んでから一か月の記念日ごとに、毎月つけてんの。なんかさぁ、否応なしに薄くなってく記憶を、これでとどめられる気がしてさ。……あいつを失った痛みと一緒に」
……異常だ。
それがとっさに思った感想だった。
彼の腕には、何個もの煙草の火の痕があった。根性焼き、とかいきがってやるほど若いわけでもないし、その数は異常としかいいようがない。
それを目の当たりにし、今までに何度も感じたことのある予感に、足が竦みそうになる。
(…ま、た?)
それは、何か悪いことが起こる予感。
また、私の存在が誰かを不幸にする予感だ。


