forget-me-not









「ごめん。僕が面白半分でキミに近づいたのがいけなかったんだ。計算違いだった。僕が感情を抱くなんてあるはずがないと思った。こんなにキミを――」


キミを、なに?

私の心は急いていて、その先の言葉を聞きたくて……。

それなのに、夜くんはその白磁の手で私の髪に触れて、こう言った。




「――何でもない。もう全部、なかったことにしよう」


なんの躊躇いも迷いもなく、それだけを告げて、その手は私からするりと離れた。

そして、そのまま背中をみせる夜くん。



(…なんで、なんで、)



どうして向き合うことから逃げてしまうの?

あと一歩のところで、あなたの心は開くのに、なぜ諦めてしまうの?

それはいつかの自分を見ているようで、余計に胸が痛んだ。あぁ、私たちはもしかしたら、似た者同士なのかもしれない。

そうなのだとしたらどちらかが、きっと私が、相手を救ってあげるべきなのだ。

もう恰好なんてつけない。ありのままの気持ちを伝えるから、だから、お願いだからこっちを見てよ。



『…夜、くん、』

「それに、僕はもうすぐ帰らなくちゃならないんだ。これが修復できたら、すぐにでも、」


私の呼びかけなど聴こえていないかのように。

元来た道をたどり、ワームホールのマシンがある場所を指差すと、彼はこちらを振り返らずにそう言った。



(…かえ、る?)



『どこ、へ…?』


あまりにも絶望的な状況に、頭がついていかない。

夜くんは、私をみてくれない。私の想いも届かない。彼の心の奥を、知れない。

そして――彼は私の手の届かない場所へ、帰ろうとしている。






――いやだよ、そんなの。