forget-me-not








「ありがとう。だけど、仕方のないことなんだ。僕は、目的のためだけに存在するんだから」

『それなら、……どうして泣いたの?』


道具が涙を流すことなんてあるの?

あの煌めきは、錯覚なんかじゃなかったはずだ。出会ったときから、漠然と抱いていた彼への印象――その中に秘められた悲しみは、気のせいなんかじゃなかったはずだ。

夜くんは孤独で、独りぼっちで、きっといつも寂しい。

だけど、その寂しささえ感じることができなかった。方法がわからなかったんだから。



(…私、)



無性に彼を抱きしめたくなった。

同じではないけれど、私もどうしようもない寂しさをいつだって抱えているから。彼に、温かさをあげたい。人の温もりを――。

それはあの初恋とはまた少し違う想いだった。もっと、リアルで。今、感じられているもの――淡いそれではなく、確かな……



(…私、)




『私、夜くんのこと、……きっと、好き』

「……」


思わず、いままで認めたくなかった想いが口をついた。

それを言ってどうなるわけでもないけれど、彼を想う人間がここにちゃんといるんだということを、伝えたかった。

一度も見せたことのない笑顔を、見せてほしくて。

その綺麗な顔をゆがめて、笑って?



けれど、夜くんは首を横に振り、静かに口を開いた。





「だめだよ」

『……え、』

「フウはあの人とのことがあってから、自分を好きな人間を愛せないんだ」


――だから、いまだってきっと、僕に同情しているだけだよ

優しい目をこちらに向けて、思ってもみなかったそんなセリフを吐かれた。



(…同情?)



そんな……そんなはず。

たしかに、神谷とのことがあってから人を傷つけたくなくて、自分も傷つきたくなかった。

自分を好きな人間を愛せない?だけど私は、同情なんかじゃなく夜くんのことが……