そういえば以前にリカが言っていたことがあったっけ。
あのときは彼女が寝ぼけていたのか、単に冗談を言っているだけかと思っていたけれど。
猫の耳をつけた彼が、病室の窓辺にたっていたと。
『リカが……』
「あぁ、やっぱりみられてたのか、あのとき。力を使うときは、姿を戻さなければならないんだ」
『姿って……夜くんは一体、』
(…誰、なの?)
私は呆然としたままに今まで思っても口にすることのできなかった疑問を口にしようとした。
すると彼は、私との距離をゆっくりと詰めて、傾いだ首をそのままに、私の顔をのぞきこむ。
「知りたい?」
その顔が、いつにもまして美麗で、思わず足が竦んだ。
彼は、いつだって美しい。そして意図せずに私の心を弄ぶ。狡猾な悪魔のように。
「僕はね、キミの到底想像に及ばない次元の世界から来たんだよ」
夜くんは、その白くて長い指を私の頬に添えた。
血の通っていないような体温のないそれは、ひんやりと冷たい。
「この宇宙の向こうの向こう、キミたち人間が神と呼ぶ存在に近い者たちが、僕を造った。
――――世界を、変えるための道具として」
そこまで言って、夜くんの指先は私の頬を離れ、その腕はぶらりと垂れ下がった。
そして、俯いてしまう彼。
最後の言葉は本当にか細く、わずかに震えていた。
目の前の彼は、まるで子猫のように、弱弱しく消えてしまいそう。


