『……クロ?』
そう直感したとき、おもわずハッと息を飲んだ。
クロ、だ。黒猫なんていっぱいいるけれど、見紛うわけがない。
だってこんなに、こんなに印象的な青い瞳をした黒猫は、クロしかいないのだから。
『でも、』
考えが、頭の中でものすごい速さで蠢いている。
クロと会ったのは10年前。そういえばあれは、少年に会う何か月か前の出来事だった。何日か経ってクロはいなくなってしまったけれど……あの瞳は
そうだ、あの少年もクロと同じ目の色をしていたっけ。どうして気が付かなかったんだろう。私はそれに、魔法のように吸い寄せられて……
『夜くん……』
姿は大きくなった彼も、まったく瞳の色だけは、変わっていないというのに。
「きづくの、遅いよ」
さっきまで伏せていた睫毛を、ぱちりと開いて、鋭いまなざしはこちらを射抜く。
涙はもう、頬を伝っていなかった。
(…見間違い?)
『夜くんは……、猫だったの?』
「そうであって、そうじゃないよ」
『え、』
「あのときはああだったというだけ。本来の僕はこういう姿」
そして、クロの姿をした彼が、再び大きくなっていく。
それは元の夜くん、なのだけれど……。
――灰色の猫の耳がついていた。


