forget-me-not








「僕は、3回もキミの前に現れたよ。それなのに、気づかないのはキミのほうじゃないか」


泣いている、なんて顔を見なければ微塵も感じさせないほど、いつも通りの口調。

私はその矛盾と、彼が泣いたという信じられない事実に頭がついていかず、目をぱちくりさせたままだ。

それでも3回というその言葉が気になって、絞り出すような声で問いかけた。



『…3回?』

「こうすれば、わかるの?」


私が返事をするまえに、夜くんはみるみるうちに縮んでいく。

それは秒数にすれば3秒くらいで、私が状況を把握したときには……

――艶やかな黒い毛並をもった、黒猫の姿に変わっていた



『え……』


あぁ、もう脳内がパンク寸前だ。

驚愕しすぎて、それに感情がついていかない。

あの少年は夜くんで、それは黒川夜で、泣かないはずの彼は泣いて、それで――



『…くろ、ねこだった?』


そんなことって、ありえるのだろうか。

もうこれ以上、考えられそうにない。

さっきまで彼を責めていた気持ちなんて吹き飛んで、私の頭にあるのは困惑と驚きだけだった。