『ごめん、フウ。おれもう…、もう無理だわ。なんでだろう、なんで…、こうなっちゃったんだろうな。ごめんな……』
思ったよりも冷静で諦観しているような、どこか投げやりのような、それでいて、いまにも泣き出しそうな、そんな神谷の第一声が電話越しにきこえた。
『え、ねぇ。今どこ?どういうこと?なにがあったの?』
『…あいつが、許せなかったんだ。おれの知らないフウを、…たくさん知ってて、おれにはない、居場所をもってるあいつが。だから…』
いまにもあふれる感情を、必死で抑え込みながら話している神谷の姿が想像できた。
あいつ――その言葉をきいて、私はなにも聞かずとも、この先の展開が予想できた。
だから聞きたくはなかったけれど、せりあがる胸の内を理性で押し込めながら、先を急くようにたずねた。
『…陵を、陵に…、なにをしたの?』
すると、しばらくの間をおいてから、嗚咽の入り乱れた情けないその声が聴こえてきた。
『あいつ…、あいつ…、おれが、おれがおまえを不幸にしてるって、そういったんだ。だから……、おれ、あいつ、
――突き落とし、て…、』


