forget-me-not








『よかったね…。あぁでも、ずっと陵の面倒みてきたのに、もうそれも終わるんだぁ』

「最初からめんどーなんてみてた?」

『あたりまえでしょ。陵はわたしがいないと、なぁんにもできないんだから』


そんな彼にも、人並みに大事な存在ができたことを嬉しく思って、笑いかけながらからかった。

陵は相変わらずポカンとしていて、両ひざをたててベットに座りながら、不思議そうに私をみていた。




「神谷さんは」

『え…、あぁ、』


ふいうちで神谷の名前をだされて、私は笑い顔をはりつけたまま顔をゆがめた。

陵と二人で過ごす時間は、神谷と出会う前と変わらないものだったから。だから、その心地よいひと時くらいは、彼のことを忘れていたかった。

愛情が薄くなったとか、そういうわけではないけれど。極度の束縛も、彼の焦ってひきつった笑顔も、ぜんぶぜんぶ、この時間だけは……。



そんな恐ろしく呑気で、調子のいいことを考えていた自分が、今となっては憎らしくて仕方ない。



――陵とのその時間でさえ、そのときすでに、侵略されてしまっていたのだから





『…うまく、いってるよ』

「…」

『なんで?』

「…」


陵が他人に興味をもつのはめずらしかったから、軽い気持ちでそう尋ねた。

彼は大きな目をぱちぱちと瞬いて、無表情のままコテン、と首を傾けた。