「…ぉ、ぉれは、おれはおまえと心中する気なんてないからな…、う、…うぅぅわぁぁぁああああ」
尻餅をつくと怯えたように佳代子を見上げて、そのまま後ずさるアキラ。
ある程度距離をおいてから慌てて入り口のほうへと走り去り、狂ったように叫びながら屋上をあとにした。
「まって…、まってよアキラ…、なんで」
――ズサ。
彼女である自分への裏切りと恐怖をはりつけただけのその背中が見えなくなると、佳代子は先刻の勢いを失い、その場にしゃがみこんだ。
「な、んで…、なんで?アキラ。愛してるって、あんなに愛してるって言ってたじゃない」
瞳に宿すのは憎しみよりも絶望と悲しみだった。信じていたものが崩れていく。
かつて愛し、愛されたものは無情にも自分への忠誠など微塵もみせてくれなかった。ただ目の当りにさせられたのは、
「わたしって…、そんな、そんな程度だったの?」
という残酷な現実だけ。


