forget-me-not








「…あ、」


アキラの首めがけて振り下ろされたその刃先。

それが彼の動脈に突き刺さる、ほんの、ほんの数センチ手前で止むをえず動きをとめる。



「…ゃ、めろ、って、」


ぎりぎり、と。佳代子の手首を必至でおさえる神谷がいた。

死を覚悟した人間の歯止めの効かないその力は、男の神谷でも食い止めるのにかなりの力を要する。

アキラといえば、完全に平常心を失い、顎をがくがくといわせながら、いまにも襲いかかろうとしている光る刃先ををみつめていた。




「…グぁあああァ。なにすんのよぉぉぉぉぉお」

「…おち、つけって」

「とめるなああああ!アキラは…アキラはぁ…」


ぐいぐいと、アキラの首筋を貫くことを未だ諦めないでいるその右手は、まるで何かが憑りついているかのように、憎しみで震えている。




「アキラは誰にも渡さないんだからぁぁぁぁあああああ!」

「…う、うわぁあああ」


ぐん、と。神谷の制止を振りっ切って、5センチほど深く振り下ろされた右手。


それに驚いたアキラが、ようやく初めて情けない叫び声を発し、砕けた腰もろとも地面に崩れる。