「で、なんなわけ?こんなさみーのに屋上ってさ」
おどけたように笑って両手を広げながら、アキラが佳代子に近づいていく。
彼女が纏う雰囲気が異質極まりないことに、第三者である神谷でも気づいて身が震えたというのに、当の本人はなぜかそれをまったく感じとっていなかった。
「早くしろよ?卒論まだぜんぜん終わんないんだからよお。いそがしーのっ」
警戒心のかけらもないアキラ。
いま、自分に危害が加わる可能性など露ほどにも考えていない。
いま、自分は絶対安全圏にいる。
そんな、ゆるみきった精神状態で、アキラは彼女にどんどん歩み寄る。
「あのさ、アキラ…」
目の前にいるのは無力で華奢な女だ。
「ん、なに?」
それも数年付き合った自分の彼女だ。
「あのさ…、」
危険性なんかあるはずがな……――


