forget-me-not








「…ウ、フウ、風!」


―――何!

肩を揺する手と名前を呼ぶ声に飛び起きれば、

室内からは人が半分以上でて行ったあとだった。




『また寝ちゃった』

「もう、そんなんだからモテないのよぉ」


この時間内に磨きあげた長い爪の指を繊細に動かして、遠くにいる男子学生に合図するリカ。

男子学生は目を輝かせてニコリ、笑う。



(魔女、だな…)




「なによ」

『別にぃ』


内心ではこんな綺麗なリカが私の“悪友”で、嬉しい。

サバサバした女の子は嫌いじゃない。




『いいの、モテなくたって』

「…とかいって、忘れてないんでしょ、どうせ」

『だからそのことは…』



(言わないで、って…)



言いかけたのに、ハイハイわかってるわよ、と呆れ半分に私を一瞥したリカは先程の男の子の元へ去る。



(あぁ、胸くそわるい…)



気がつけば周りには誰もいなくて、目下には落書きしたノートとペンだけ。

顔をあげれば大きな窓からは枯れた木々が見えて、木枯らしに揺れていた。



(…いっやな季節だなぁ、本当)