たとえばセカイが沈むとき



 そのとき。

 背後から、軋轢の激しい轟音が、僕のからだを揺るがした。

 瞬時に振り向いた僕の目に飛び込んで来たのは、白いスプリングコートが織りなす、蝶の羽。

 チサトの名を、喉が裂けんばかりに叫ぶ過去の僕の声が、頭の中にわんわんと響く。

 僕は息も出来ずに、ひゅうひゅうと喉が鳴るまま立ち尽くした。

 嘘だ。嘘だ。──何で。

 事故を回避出来た筈のチサトが、道路に横たわっていた。

 自動車がぶつかった衝撃で建造物が崩れ、その瓦礫に他の自動車が操縦を乱し、チサトを跳ね上げたのだ。

 それが脳に伝わると、僕はすぐさまマシンへ戻った。