僕は二人に気付かれぬように後をつけた。

 何も知らずにチサトの隣を歩く過去の僕が、間抜け面で笑っている。チサトが隣にいる幸せを、当たり前のように享受しているのが腹立たしかった。もっとチサトがいる幸せを噛みしめろ、と諭したいくらいだ。

 そんな一年後の僕も、チサトを助けると息巻いていたわりに、策なんてものは全然思いつかないていたらく。事故の時刻にあの場所を通らないよう、何とかしなきゃと焦るだけだ。

 考えつくのは、違う道へ誘導するか、通りかかる時間をズラすかだろう。

 違う道へ誘導するのは、ニセの工事現場でも作ればいいのかもしれないが、準備する時間がない。

 通りかかる時間をズラす為に、何かないかと辺りを見回す。

 何の策も思いつかない僕の頭と同じくらい、使えそうなものは何にも目に入らなかった。