男は僕をタイムマシンの中へいざなった。

 乗り込んだそれは、思ったよりも簡単な操作性だった。

 行きたい年月日を入力し発進ボタンを押下するだけで、タイムマシンが日数を計算して連れて行ってくれる。

 男に促され、僕は早速、この一年忘れる事のなかった、チサトが事故に遭った日付を入力した。

 一生忘れない日付けが僕に刻まれていた。けれど、今日のこの体験によっては、忘れてもいい日付になるかもしれない。

 過去でチサトを助ける事が出来れば、もうあの日付は忘れ、新しい思い出で塗り変える事が出来るだろう。

 この一年の記憶も、チサトとの思い出で溢れさせる事が出来る筈だ。

 僕は力を込めず、祈る想いでマシンをスタートさせた。