目の前にいるのは、ひょっとこの面をかぶったタキシードの人間。


 宴会で出されるような机に向き合って、二人は座っていた。


 もう一人は、赤っぽい茶髪の、ポニーテールの人間だった。


 体に滑らかさはなく、胸もない。


 顔はどう贔屓目に見ても整っているとは言えず、むしろ男に近い。


 しかし残念ながら、この白いシャツと迷彩のズボンを履いただらしない上にミスマッチな服装の人間は女、しかも女子高生である。


「うん、うまっ!」


 少年っぽい少女――キャプテンはグラスに注がれたトマトジュースとぐびぐびと飲み干した。


「またまた、すげー飲みっぷりだね。女か?本当に」


「うん、うちは女やよ。胸は濃尾平野やけどさ」


「貧乳を認めちまったよこいつ!」


 タキシードのそいつはびっくりしたと言わんばかりの体勢をとった。


「んなもんさ、遠慮して飲んどったら喉詰まる。ぐびっと飲みやー」


「いや、これ一応うちが用意したんやけどさ」


「お、岐阜弁分かるの?」


「うちをなめんな。一応これでも同じ岐阜県民」


「なるほど、話が伝わるわけや」


 キャプテンは溢れるほどのトマトジュースをグラスに注いだ。