紳士はグビグビをワイングラス一杯に注いだトマトジュースを飲み干す。


 しかし、顔は見えない。


「下品な飲み方するなぁ、お前」


「それはフランスの上品な食事の食べ方ってやつかい?悪いが、ここは王様の国じゃなくて侍の天下なんだよ」


「過去形だろうが、侍は」


「それじゃあ、陰陽師」


「それ、もっと昔だろうが。何で江戸時代からさらに平安時代にさかのぼってんだ」


「バカヤロウ、陰陽師って実際は明治時代まで存在してたんだぞ。陰陽師なめんなよ、このピーマ・・・」


「それ言ったらナイフで心臓えぐるぞ」


 何たる暴言の吐き合い。


 ケイラの青く澄んだ瞳孔が、紳士を捉えた。


「まぁまぁ、飲みたまえ」


 なだめるように紳士は言った。

 ワイングラスにたっぷりと注がれた、美しいほど純白でクリーミーな液体。


『小さなお子様のグングン育つ!カルシウムたっぷりの牧場ミルク☆』









「お前さ、なめてんの?」







 ケイラが激昂にも似た声で言った。