「どなたか手配いたしましょうか?」
ん?と目配せする松田医師にわたしは口ごもってしまう。
爺やの…代わりか。
「わたし、一人でも大丈夫です」
それならば、一人がマシかな?
「いや、しかし…」
言いかけたところで看護師さんが携帯を持って入ってきた。
「先生。お電話を代わりたいと。奥さまです」
(お母様!?)
少々緊張しているのか「あぁ」と声のトーンが変わり、そっと受けとる松田医師。
「いえ、全然。えぇ、お嬢様が…お一人で…確かにそうですが…」
「お嬢様、どうぞ」
手渡された赤い携帯電話。わたしは髪をかきあげて耳に当てる。
「…もしもし」

