それからも俺はあまり料理に集中できていなかったみたいで。 結愛さまの笑顔やしぐさが頭から離れないわけで。 執事という身分がすごくキツく感じられてしまうようになってしまっている。 「できたよ?次はオーブン?」 「………」 「慧斗」 「え、あぁ………はい。余熱したオーブンにお願いします」 聞いてなかった。 いや、俺の耳はどうかしたのか? 鼓動だけが耳元をこだましているんだ。 「入れるよ?」 ……苦しいくらいに。