「あ………っ」
唐突に浮かんだアイデア。
携帯を片手に話を進める父をじっと見る。
何かに気づいた父は、早々と話を切り上げたようで、携帯を置くと「何を決めたんだ?」と聞いてきた。
「はっきり言う」
「あぁ」
「…私は、お父さまや親戚の様子を聞いたら、結婚はしたくないと考えてる」
「そりゃあまた極端だな」
ハハッと笑われ、思わず苦笑いをしてしまう。
「でも、それじゃ相田家がまずいってこともわかってる」
「そうか」
「だから、ワガママを聞いてほしいんだ」
存続の危機なら仕方あるまいなぁ、と冗談交じりの父に真剣な顔を向ける。
「執事として、百瀬家で手伝いながら結愛様の姿を見てみたいんだ」
父は、一瞬ぽかんとしたあと、静かにうなずいた。

