当時数人の結婚の話が出ていた父は、パーティや式典で一緒になる令嬢との結婚をあんまりよくは思っていなかった。

そんな中に出会ったのが、母。

候補には入ってなかったのだが、パーティや学校で猛アタックを食らい、父もそんなに悪い印象を抱くこともなく、母は父に嫁いだ。

それから程なくして生まれたのが私だ。

しかし、そのころから、様子が変わってきたのである。


「奥さま、ハルトさまの定期健診のことですが」

「えっと、その日は鴨居さまとのお食事会があるんだわ。お願いできるかしら?」

「しかし……はい」

一度や二度なら良い。しかしこれが続いていたというのを、聞いたことがある。食事、ショッピング、娯楽、と彼女は自分の時間を裂かれることが一番嫌いだった。


物心ついたころからは、母はあまり会えないものだと思っていた。

「お母さまはどちらに?」

「遠い異国の地ですわハルトさま。お父様はじきにお見えになりますからね」