「なぁ、無性にイライラするのはオレだけか?」 秀のこの問いに迷わず「俺もだ」の声がハモる。 「そんなことおっしゃらずに。お嬢様はまだ思い出されませんか?」 「えぇ……」 思い出そうとしているのか苦い顔をしている結愛さまと。 結愛さまの古い知り合いなのかわかりきったように笑う爺やさま。 誰なんだよ、あいつ。 「仕方ありませんね。結愛さま、“シンくん”さまですよ」 シンくん その名前を聞いたとたんに結愛さまの瞳が見開かれる。 「シンくん?!」