八木原君は安堵の表情を浮かべ、図書室の奥へ足を勧めた。 窓際に置いてある椅子に読みかけの本があった。 八木原君はそれを手に取ると、中をペラペラとめくった。 「本、好きなんだ。…読書してる時間が、一番の安らぎになる」 微笑みながら本を見つめる八木原君は、幸せそうだった。 「あっあたしも本、好きです!」 話を合わせたくて、さっき机の上に置いてあった本を見せる。 図書委員に返しそびれた、厚目の本。 もちろん読んだことはない。